40'S USN TROUSERS for SURE-MAN
26,400円(税2,400円)
40'S USN TROUSERS for SURE-MAN
サーマルのエッセイに時間がかかり過ぎました。
画像と、ポエムが間に合っておりませんが、ソーイングボーイズのIGLIVEをご確認いただければ嬉しいです。
3月30日 午前9時から販売開始です。
どうぞよろしくお願いします。
ジャスミンとボーズが履いているのはビンテージのW34です。
そっくりに作りましたので、取り急ぎ洗い後のイメージとしていただければ幸いです。
以下、遅めのポエム。
もう、残り3本になりました。
みんなありがとう。こんなに早くなくなるなんて思ってなかったよ。
もしも、ポエムがセールスの為だったら、
もう書く必要なんてないのかもしれないけど、
僕と、僕たちと、君のメモリーのために必要なんだ。
もう、商品画像はいらないかもしれない。すでにみんなの手元に届いてるから。商品が届いた後に、紹介文を読むなんて不思議な展開を楽しんでもらえたら嬉しいです。
実はこのビンテージを手に入れたのは、アノラックよりも前だった。アノラックの製作が決まり、生地を作って、テープを作って。いつの間にか夢中になってた。特に生地なんてほんのちょっとしか違わないのに、角度がどうしても気になって。そこに真実があるような気がしてた。笑
それで、次はパンツとかどうかな?って話になって、
あのUSNのユーティリティーあったじゃん!って展開で改めて取り出してみたんだ。
そういえばこのユーティリティー、ツイルなんだよな...
U...
S...
N...
ツ...
イ...
ル...
.....まじか。
なんと!アノラックと、ユーティリティーパンツの生地が同じなんだ。ビンテージとビンテージの綾と綾の角度が...同じだった。図らずも、僕たちはUSNツイルの真実を再現していた。こんなことってあるのか?ミラクルだ。これは 左綾のキセキだ。
もう、運命を感じていた。
神様が作りなさい。と言っている。笑
もう、20年以上縫ってるんだ。
僕たちはだいたい失敗しない。...そのつもりだったんだけど、今回は違ってた。名前が悪いね。ユーティリティーパンツ。なんとなくイージーな響きなんだもん。ペインターパンツの友達かなんかだろうと思ってた。
ファーストサンプルが上がった。...どうもうまくいってない。ビンテージのサイズが幸運にもW34だったこともあり、履いてみた感じがナイスだったから、このまま再現したかった。各所の寸法は出ているのに、何かが違う。
P「なんでや?」
J「振ってません?」
P「んなわけないって」
J「いや、振ってますって」
P「ねじれてるだけやろ?」
J「ボクが縫ったんすよ」
P「下手って言ってないじゃん。洗ったらさ」
J「いやワキ振ってますって」
P「そうか?」
J「いや…だから!」
P「…」
J「じゃぁ、僕、縫わないです」
P「おい------!」
ジャスミンは遠慮がない。いつものことだ。
なにせ、比べているのは80年前のビンテージ。デッドストックでもない限り、縮んでいるし、ねじれてる。もう一度、コンパスを合わせなおして仮説を立ててトライする。たとえ季節が過ぎても、納得いくまで。そういう領域こそが、僕たちにしか作れないプロダクトの入り口なんだと思う。だってジャスミンが縫ってくれないんだから。笑
3回目の試作が終わって、見えてきた。
これは ”パンツ” じゃなくて、”トラウザーズ” なんだ。確実に設計者がいる。メジャーで寸法を追っただけではたどり着けない。いわゆる工場レベルのパターンとは訳が違う。ウエストから、ヒップへかけてのホールド感。ワタリで体から離れ、クリースも裾までねじれなく流す。もちろん、インシームとアウトシームの関係性... すべて意図を感じる配置だった。
そうか。これはビスポークを学び、男子服とは何たるかの高みを求めた男がいたはずだ。本物を求めた、ずっと先の、先にある神の領域に到達したパタンナー(以下モーリス)が設計したんだと思う。分類上はミリタリーパンツだけど、構造のベースにはテーラリングの技術がある。だれが履いても男前に見える偶然じゃなくて、設計にきちんとした意図があるからだと思う。
では、この”トラウザーズ”はどのようにして生まれたのか。
僕は1940年代はラップシーム革命が起きていたと思っている。カジュアルメーカーが先に取り入れていたかもしれない。トラウザーズメーカーもこの流れを取り込んだのだと思う。むしろ、モーリスが所属していた会社のトラウザーズメーカーがミリタリーパンツを生産したって捉えたほうが納得がいくんだ。もしかして初めてのチャレンジだったのかもしれない。
モーリスはきっと悩んだ。ミリタリーパンツは量産合理化が求められている。アイロンワークは使えない。手縫いは使わない。全部ミシン仕上げ。おまけにボタンは鉄製で、ぶち抜けって指示が出てる。
テーラリングのテクニックはほぼ使えない中、何を省き、何を残すのか? 究極の選択だ。 これは、”パンツ” なのか、”トラウザーズ”なのか... のちにミリタリーパンツの黎明期において重要なポイントとなることは、まだ誰も知らない。
えぇ!そこ...? モーリスとんでもないものを残していた。
ウエストベルト、スレーキ、いろんなものが奪われていく。合理化の名のもとに。そして、ラップシーム... これが実に厄介だった。そもそも、トラウザーズの一般的な縫製順としては、左右の足を筒になるようにそれぞれ縫ってから、“前から後ろへ” 股ぐりを繋ぐというのが基本。
ラップシームの場合、まず、前身頃と後身頃の脇を先に縫い合わせて、そのあとに、内股で左右の足を“横断する”ように繋いで、一気に筒に仕上げる。という具合に基本が変わってくる。
なのに、モーリスは”シック”を残していた。
*シックの解説
テーラーメイドされたトラウザーズに見られる仕様で、内股部分の補強としてつける。生地自体を補強する目的でつけるシックと、縫い目を補完する目的でつける、持ち出しパーツから続く棒シックがある。今回は棒シックのお話。
ビンテージを観察して、ステッチの順番を追った。
ラップシームは右から左に縫うのに、シックは前から後ろに縫う必要がある。前あきを途中まで縫って(ミシンA)インシームを縫って(ミシンB)さっきの仮止めとシックを同時に縫って完成(ミシンC)
補強という意味では確かに合理的ではあるが...
あぁ、ややこしい。ちゃんと理解できたら、思わず笑ってしまった。全然合理的じゃない。縫い順も複雑化してるし、ミシンの間を行ったり来たり...笑 しかも、気づいてもらえない。もう履いてくれてるみんなも「どこ?」ってなってそうだし。こんな地味なところに、そっと残したのはモーリスの意地みたいなものだったと思う。
1940年 もう80年以上前の話だけど、この辺りで現在のミリタリーパンツや、カジュアルウェアの基礎となる部分が始まっていて、テーラリングをベースとした設計を、量産合理化させていくミックス具合がとても面白いなと思いました。表向きなディテールの向こう側に、設計者の存在を感じられたのがとても意味深くて。ユーティリティートラウザーズがなんにでも合わせやすくて、みんなの ”ユーティリティー” なアイテムになったら、それはきっと、モーリスのおかげです。
*SUREのUSN TROUSERSについているのは ”モーリスシック” と呼ぶことにします。
*この物語はフィクションではありませんが、モーリスは空想の人物です。
あとがき
意図の分からないディテールは再現しない。
xxdevelopmentにはミシンの妖精がいます。ビンテージを参考に、これは意図のあるものなのか?ただの偶然か?
ジャスミンが選別します。今回のトラウザーズでは仮止めと呼ばれる個所が数か所あり、そのまま再現されています。左右の前ポケットにあり、これは脇をラップシームする場合に必要です。 また、先ほどのシックを最後に止めるダブルステッチも、バータックが入る所定の位置よりも伸びています。これらは縫い留めるという作業をしていないため、ビリッっと行きます。アァァ...ってなっても大丈夫。構造上は問題ありません。妖精のいたずらだと思ってください。
ベルトループがずれています。クリースの基準となる前ループは所定の位置に。脇ループはわかりやすく縫い目のとなり。後ろのループは左右でずれています。
そして、後ろのセンターループはちょっとながめ。きっと偶然の産物だけど、このユルさを再現したくてずれ具合を数値化して、全サイズに反映することに成功しました。こんなことを言い出す妖精はクレイジーです。
ウエストベルトはシングルステッチで仕上げてあるのだけど、ここをチェーンステッチに変更した。ビンテージはおそらく幅広のダブルステッチ。これは僕たちの手持ち設備には無く、だったらシングルを2回行くか?となるんだけど、これは超絶悲惨な結末が見えている。カーブに直線のベルトをつける訳で、物理的に説明の付かない行為だけど上下同時に縫えば、仕上げることができる。特注で治具を作り完成させたの。いくつかビンテージを調べるとチェーンステッチのものも存在するから、アリということにさせて。
ポケット袋布のインターロックに見えて、インターロックじゃないステッチはミシンが無くて。インターロックを調整して近づけました。
ユニオンスペシャルが作ったミシンなんだけど、もう絶滅してる。もし見つかったら、家を売ってでも買います。
手塗りの釦が磁石にくっつきます。これは深い話になりそうだ。40’sのウォーモデルの特徴といえそうです。ジーンズの世界でも有名ですね。ミリタリーアイテムだけに、当然といえば当然ですが、ジーンズメーカーほどは慣れていなかったのかもしれません。上下の組み合わせがおかしいのです。ステープルタイプにリベットをぶち抜きます。ジーンズではあまり見かけませんが、ミリタリーアイテムではほかにもちらほら... かなり強引な方法です。素材自体も調べました。鉄製です。そこまでしなくても、と思いながら裏も調べたらやっぱり鉄製です。そこらへんにある素材で良ければ、汎用品が現在でも作られていますが、それではロマン不足です。鉄製で作ってもらうようにオーダーをしました。そして、ラッカー塗装。これもミリタリーアイテムの特徴ですね。ボタンメーカーに縫ってと頼んだのですが、リベットも塗ってほしいと頼んだら、断られました。笑 ...ちょっ待てよ。当時も縫製工場で手塗りかもしれない。パターンの仕事が終わって手の空いたモーリスが縫っていたかもしれない。これは彼に近づくためには必要な経験...なはずだ。 覚悟は決まった。僕が塗るよ。 表も裏も全部塗った。はがれてほしいけど、すぐはがれちゃいけないし...理想に近づくように何度も重ねて。最後はジャスミンもあきれていたけど、いい思い出ができました。笑
エイジング。ビンテージの雰囲気が最高だった。生地の綾の角度はうまく再現ができている。今回は生地の状態でオリーブに染めるわけだけど、ビンテージを送ってせ染色方法を確認してもらった。回答はスレン染め。時代背景的にはインディゴが使いづらくなって選ばれたのかな。スレン染めは堅牢度に優れている。(色再現は難しいのだけど)沢山洗っても変色は少ないはず。そのままの色味で色が抜けていくって表現が正しいかな。それと、ステッチ。すべて綿糸で縫製した。もちろんカラーは生地に合わせて特注してる。 どうりで馴染みがいいわけだ。どんどん洗ってほしいなぁ。
AS FABLIC FADES, THE DETAILS LAST.
いずれ生地は色が落ちて、ディテールが残る。80年前のヴィンテージがそうであったように、僕たちの洋服もそうでありたい。
みんながたくさん履いてくれたら、完成です。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
遅めのポエムになりましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
また生地を作るところから始めます。待っててね。
ポニーより。
製品は未洗いでお届けします。
洗濯後は縮みが出ますので、サイズチャートをご確認ください。
裾上げについては、受付無しロールアップで対応をお願いします。
*裾に向けてのテーパードがあり内外ラップシームの為、きれいに仕上がらないのが理由です。
PATTERN : 40 TROUSERS
FABLIC : SURE 1610 TWILL Vat (Threne) Dyed
THREAD : Cotton
COLOR : Olive
SIZE : W30.32.34.36.38
PRICE : 26,400 JPY (tax in)